『長い手紙』制作風景
1. 音楽:古田愛弓
ピアノの前に座って何気なくポロポロと奏でていたら、他の楽器がそれに合わせて自然に入ってくる。ピアノを中心とした、そんな穏やかなセッション。
「星くずスロウ」では言葉と絵が引き立つようなエレピの素材としての創作でしたが、今作は一旦ピアノソロ的に作った楽曲にあとから歌のメロディを乗せてみようと考えました。
ピアノの主旋律に、あとからきた言葉が絵が対旋律として寄り添う、そういう作品を目指しました。
そんなイメージの中、楽曲自体は自分がかつて子どもの頃にピアノと戯れながら即興で作っていたような、あどけなくてどこか懐かしいものとなりました。
2. 言葉:ナツオ
ピアノのシンプルな出だしと、メロディーラインに漂う「日本感」というのか、和の雰囲気。
まるで卒業式の歌のような切なさと、思い出に浸るセンチメンタルな印象をとっかかりにして、スルスルと言葉が出てきたのが心地よかった印象がある。
やや湿っていて、奥ゆかしい日本のイメージ。
それらのムードを感じながら「もう二度と再会することができない人」に向けての言葉をふくらませた。
ふとした折に「あの人から見てどうか」という考え方だけでなく、「あの頃のあの人から見てどうか」「あの頃の自分から見てどうか」という物の考え方をすることがある。
物理的な別れだけでなく、誰もが全く同じ人間で居続けることはできないということも含めて、そこに対する切なさや過去への愛着みたいなものを俯瞰のイメージで書こうとした。
こういった感傷的な文章は「もののあわれ」ではないけれど、日本人の感性にはお家芸のようだなと思うほど、サクサク書けた親しみやすい世界観でした。
昨年2020年コロナになってから、大河ドラマを見たり、ゲーム『刀剣乱舞』を始めたりと、自分の中で謎の和コンテンツブームが来たことも書きやすさを手伝ってくれた気がします。(笑)
3. 絵:キノピ
優しいピアノの伴奏が、過去を振り返り手紙を書く人物を優しく支え、記憶の中の美しさや切なさをドラマチックに浮かび上がらせている。
ピアノの音を聴きながら文章を読んでいると、大人になった女性が実家へ帰省中に過去を思い出している場面が思い浮かんだので絵にしました。
音楽に言葉が寄り添って、その後に絵が付いて。音楽担当の古田愛弓さんが意図したように、流れがとてもスムーズな心地よいセッションになったのではないだろうか。