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『冬の即興』制作風景  

1.  絵:キノピ

北海道の冬は長い。白い雪に覆われた景色に春を待ち遠しく感じる、静かで冷たい季節。それでも周りをよく見ると、豊かな世界が広がっている。ちろちろ踊るみたいに降って楽しげな日もあれば、静かに細かい雪が降る日もある。木々の枝にはしっとりとこんもり雪をのせていたり、さらさらきらめく雪の粒を風が落としていったり。特に、木々の枝と雪の塊によって作り出される形が美しく、ずっとみていたいと思う。しかし、景色は移り変わり、あっという間に過ぎ去ってしまう。心が奪われる一瞬を切り取って残しておきたいという欲求から、素早いタッチで受けた印象をそのまま描きとめようと努めた。


 

2. 言葉:ナツオ

絵から言葉をのせるというのは、過去にもライフォーツーのインスタグラム投稿でやってはきたものの、今回は音楽も加わるということで「音としての言葉」をやや意識して作った。

絵を見ると、まるで窓から見える雪景色をそのまま切り取ったようで、その時感じた情感のまま書き出してみた。

「森」「ヴェール」「凍てついて」「とばり」「ふりつもり」など、音としても好きな言葉を使っているうちに、昭和『みんなの歌』の映像詩のような谷内六郎風の少年が窓をのぞきこむイメージが出てきたので、最終的にそういった牧歌的で童謡のような世界観に引っぱられた感じがある。

とはいえ、それらの映像を脳内で再生しながら言葉を選べたのは面白い経験でした。


 

3. 音楽:古田愛弓

はじめの絵を拝見したとき「荘厳な雪国の風景」という印象を受け、そのイメージをピアノの音で表現することを意識しました。果てない森にしんしんと音も無く降り積もる雪。幸運なことにピアノの音色はそれを表現するのに適したものだったと思います。それでいて言葉のほうはやわらかい日本語の美しい表現であったので、歌のメロディにはその世界観をそのまま残せるように。メロディなどの音の流れはもちろんのこと、文字通り音楽での「色」を司る「音色」というものがよりいっそう重要な作品でありました。

 

雪の厳しい冷たさ、キリリとした美しさ、木々の色と言葉のあたたかさ、やわらかさ——それらを全て内包したような音の風景を目指しました。

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