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『Spell』制作風景  

1. 絵:キノピ

冬を過ごした後の春はとても喜びに満ちている。地面が順々に春の草花で覆われていく様は生命力に溢れ、目にも楽しい。また、摘み草をして体に取り入れることで、体がとても元気になる。季節が巡って再び会えた喜びや、草花が生える力強い様を、待ちわびた春に感謝を込めて絵に描きました。タンポポ、ツクシ、ヨモギ、ハコベ、オオイヌノフグリ、スミレ。これらを絵の中に描き込んだが、一つ一つに焦点を合わせるというより、全体としての、もしくは塊としての地面を描こうと努めた。


 

2. 音楽:古田愛弓

緑色が印象的な、抽象画のようでもあり、植物の近影のようでもあり、生き物の根源に触れているような今回の絵にどういう音を当てるべきか。

とにかくこの色彩感を音で表現することに努めました。

ピアノのアルペジオは不安定かつ鮮やかに広がりを持たせ、中間部で深い色を足す。コーラスで色を重ね、停滞したメロディでそれらに影をつけていく。音で模写をしているような、あるいはこの絵に描き足していくような、音で絵を描くイメージで作りました。

 

今こうして文章に起こしながら思い返すと、おそらく色を乗せる順序は実際に絵を描くそれとは逆で、自分の目に入った色から再構築したかたちになったのではないかと思います。表面から絵の中に飛び込んで、深いところに触れてまた上がってくる、そういう体験をしていただけたら幸いです。


 

3. 言葉:ナツオ

初夏から夏にかけて見られるような濃い緑の絵。

そして、さざ波や草原を吹き抜ける風を思わせるダイナミックなピアノ。

捉え所がないことの難しさを感じながらも、その捉えようのなさを、そのまま生かす形でもよいかもと思い、ごうごうと音を立てて渡っていく風をイメージして最初の文章を書き『無題』として提出。

その後に音楽がついてきたのだけれど、そのアレンジを受けて更にイメージが深まり、今の形に収まった。

コーラスのハーモニーに「緑の魔法」のようなイメージが湧いてきて、妖精というのか魔物というのか、寓話『北風と太陽』に出てくる北風の巻き起こす風のような映像が出てきたのが方向性の決め手に。

書く際に、最初はジブリ『風立ちぬ』に出てくる菜穂子さんのキャンパスが風に飛ばされるシーンのような目線の映像が、だんだん上昇してドローン撮影のようなやや高度のあるものへと変わっていったのが、面白かった。

自分にとって、絵と音によるイメージの相互作用を1番感じることができた作品でもあります。

それでいて、歌詞や音という容器を脱して再構築しようとしたプロセスが、新鮮で勉強にもなりました。

もし魔法を使えるなら、こういう言い切りの形でスペルを作るんだろうなという空想も助けになったと思います。

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